2019年8月14日水曜日

甲州街道歩き【第15回:蔦木→茅野】(その3)

田圃の中の農道はいったんちょっと広い農道にぶつかり、そこを左折するとすぐに右折して、再び田圃の中の農道を進みます。ここも耕地整理の際にこういう構造の道路になっただけで、元々の旧甲州街道は田圃の中を斜めに突っ切っていたのだと推察されます。
道の左側を釜無川が流れています。かなり上流に来ているのと、このところの雨による増水で、川の流れはかなり急です。
石塔石仏群があります。
その石塔石仏群のところで国道20号線に合流します。「東京から177km」という道標が立っています。
民家の庭先に「明治天皇平岡御膳水碑」が立っています。おそらく先ほどの御野立所で野立てのお茶に使われた水は、このお宅で採取された水だということなのでしょう。
机観音堂です。机とはこのあたりの地名の机のことです (長野県諏訪郡富士見町落合机)。机観音堂の正式名称は竹林寺。この観音堂の前庭に6基の六地蔵石幢があります。造立年代は明暦2(1656)、元禄5(1692)、宝永元年(1704)2基、宝永6(1709)5基に刻まれています。年紀のないものが1基ありますが、形式からこれら5基と同時代のものと推定されるのだそうです。六地蔵というと、6体のお地蔵さんが仲良く並んで立っているのが一般的ですが、この六地蔵石幢では石幢と呼ばれる灯籠の部分にそれぞれ1体ずつの小さな地蔵尊が配されています。珍しい形態の六地蔵です。
真ん中の石碑に刻まれた「富蔵山」とは、長野県の安曇野にある信濃三十三番観音札所第十五番の霊場 富蔵山岩殿寺(とくらやま がんでんじ)のこと。火渡りの儀式が行われる修験道の寺院で、おそらくその岩殿寺で修行を積んだ僧がここに立てたのでしょう。
その机観音堂の右手に登っていく参道の石段があって、その先に三社明神社があります。
机観音堂のすぐ先で、旧甲州街道は国道20号線から右手の細い道に入ります。
右手に馬頭観音が幾つも並んで祀られています。馬頭観音は「馬頭観音」あるいは「馬頭観世音」と刻まれた文字塔がほとんどなのですが、ここには3つの顔と8本の腕を持つ三面八臂の馬頭観音像が祀られています。馬頭観音は仏教における信仰対象である菩薩の一尊で、衆生の無智・煩悩を排除し、諸悪を毀壊する菩薩とされています。そのため、他の菩薩(観音)が女性的で穏やかな表情で表されるのに対し、一般に馬頭観音のみは目尻を吊り上げ、怒髪天を衝き、牙を剥き出した憤怒相をしています。梵名のハヤグリーヴァが「馬の首」の意味を持つことから、馬頭観音と呼ばれています。また「馬頭」という名称から、民間信仰では馬の守護仏としても祀られています。この三面八臂の馬頭観音像、かなりの年代物のようですが、その憤怒の表情が見事に崩れずに現存しています。ウォーキングリーダーさんによると、これほど風化していない馬頭観音像は珍しいのだそうです。
ここにも三面八臂の馬頭観音像がありますが、こちらは比較的新しいもののようです。
釜無川の支流の脇を進み、河岸段丘を急坂で登っていきます。
今度は下り。落合の集落に入っていきます。
その坂の途中に「かぐら石」と呼ばれる大きな石があります。よく見ると獅子の頭の形をしているということですが、どう見ても獅子の頭には見えません。その「かぐら石」の隣に流路があり、かつてここを湧き水が流れ、旅人の喉を潤したそうなのですが、今はすっかり涸れてしまっています。
道端の草花に癒されます。
国道20号線に合流します。
合流後、少し歩くと瀬沢大橋で釜無川の支流の立場川(瀬沢川)を渡ります。
この立場川も釜無川の上流の川なので、かなりの急流です。しかもこのところ雨の日が続いているので、流量も多そうです。江戸時代にはこの国道20号線の瀬沢大橋の下流約50メートルほどの所に橋が架けられていたそうなのですが、今は取り付け道路のみ残っています。この立場川は結構深い谷となっているので、当時この川にどんな橋が架かっていたのか興味が湧いてきます。
瀬沢大橋を渡ったところで国道20号線を左折します。
立場川沿いを50メートルほど進むと旧甲州街道は道なりにUターンをするようにカーブしていきます。すなわち、かつてはこのカーブするところに橋が架かっていたというわけで、今はその橋が残っていないので、国道20号線の瀬沢大橋で大きく迂回したってことですね。瀬沢大橋の手前で国道20号線と合流した地点で、旧甲州街道は国道20号線を突っ切って50メートルほど伸び、そこから橋で渡ってくるルートだったってことなんですね。なので、今は大きく(無駄に)Uターンしているように見えるこの道も、かつては単純な右カーブだったってことなのでしょう。納得です。このあたりから瀬沢という集落に入ります。
酒屋さんの軒下に「麗人」「舞姫」「ダイヤ菊」「真澄」「本金」と信州諏訪地方を代表する清酒の銘柄が並んでいます。私はよく分かりませんが、日本酒好きにはたまらないのでしょうね。


……(その4)に続きます。

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