公開日2023/01/05
[晴れ時々ちょっと横道]第100回 デジタルの“地産地消”へ
皆様、新年、明けましておめでとうございます。
世界的規模で猛威を奮う新型コロナウイルスの感染拡大騒動の完全終息までには、まだもう少し時間がかかりそうですが、そういう中でも感染拡大防止のための様々な制約を知恵と工夫で乗り越えて、ご一緒に頑張っていきましょう。
今年一年が皆様にとりまして素晴らしい一年になりますことを、心よりお祈り申し上げます。
春や昔 十五万石の 城下かな 正岡子規 初日さす 硯(すずり)の海に 波もなし 正岡子規 |
私が言うまでもなく、新型コロナウイルスの感染拡大騒動が長引く中で、世の中は大きく様変わりをしています。その様変わりを生み出している大きな原動力になっているものが、“デジタル”です。特にビジネスの世界では、デジタル通信技術の進展により、働く場所の固定化の概念が薄れ、在宅ワークやワーケーションなどが当たり前のように行われるようになってきて、働く環境(インフラ)が大きく様変わりしてきています。また、それに伴って、ビジネスシーンでのペーパーレス化が一気に進展し、多種多様なクラウドサービスやモバイルアプリが提供されるようになってきています。
「デジタル変革」を意味するDX(Digital Transformation)という言葉も新聞や雑誌などでたびたび目にするようになりました。このDXとは、企業がAI、IoT、ビッグデータなどのデジタル技術を用いて、業務フローの改善や新たなビジネスモデルの創出だけでなく、レガシーシステムからの脱却や企業風土の変革等を実現させることを意味する言葉ですが、今やDXの推進はあらゆる企業にとって、変化の激しい時代の中で、市場における競争優位性を維持し続けるための重要なテーマの1つとなっている感さえします。
そうした中、このDXの推進を担う人材、いわゆる「デジタル人材」の育成が社会的な急務となっています。デジタル人材とは、「IoT」「AI」「生体認証」「クラウド」「5G」「ビッグデータ」といった最先端のデジタル技術を活用して、企業等に対して新たな価値提供ができる人材のことですが、DXの推進を担う多様な人材の総称と捉える必要があると私は思っています。よく誤解されることですが、エンジニアやデータサイエンティストといった専門的知識を持った人材だけがデジタル人材というわけではありません。DX推進に必要なスキルには、デジタルエンジニアリングやデータサイエンスといった技術系スキルと、ビジネス系の「ビジネス・サービス設計」「組織・プロジェクト管理」のスキルの両面があります。
DX(Digital Transformation)推進に必要なスキルセット |
よく「デジタル人材が不足している」という言葉を耳にすることがあり、デジタルエンジニアリングやデータサイエンスといった技術系スキルを持った人材の育成について議論されることが多いのですが、私に言わせると、それってデジタルのマーケットがちゃんとできた以降の話で、今圧倒的に不足して、育成が急務なのはデジタルマーケットを創出できるビジネス系スキルを有する人材の育成ではないでしょうか。明確なデジタルのマーケットさえ目の前に現れてきたら、IT企業だってデジタルエンジニアリングやデータサイエンスといった技術系スキルを持った人材の育成に本腰を入れて取り組むでしょうし、ベースとなるIT技術を持った技術系人材なら題材さえ与えられたら急激にスキルアップしていくことは容易に可能であると、私は思っています。残念ながら、今は明確なデジタルマーケットがまだ見えてきていないため、何に取り組んでいいのか分からない状態なのではないでしょうか。世の中に「ニワトリが先か、卵が先か」という言葉がありますが、デジタルに関して言えば、明らかにデジタルマーケットの創出が先で、人材育成もそのデジタルマーケットを創出できるビジネス系スキルを持った人材を育成するほうが先だ、と私は思っています。
私は、現在、愛媛大学、松山大学、松山東雲女子大学、松山東雲短期大学という4つの大学で、デジタル人材育成に関わる愛媛県寄附講座のプロデューサー兼非常勤講師をさせていただいています。ことの発端は5年前の2018年7月。私は前の月の6月下旬に15年間務めさせていただいた気象情報会社ハレックスの代表取締役社長を退任し、松山市に本社のあるNTTデータ四国を含む複数のNTTデータグループ会社の顧問に就任しました。
着任後すぐに旧知の田中英樹・愛媛県経済労働部長(当時。現副知事)のところに着任のご挨拶に伺ったのですが、その時、田中部長からこんなご依頼がありました。「地元の松山大学が2023年に創立100周年を迎えます。松山大学はこの100年の間に地元愛媛県の経済界に多くの優秀な人材を輩出していることから、創立100周年を記念して、松山大学を盛り立てようと、今年(2018年)3月に愛媛県と包括連携協定を締結したんです。で、その包括連携協定に基づき愛媛県寄附講座を開講しようと思っていたところなんです。ちょうどいい人が来てくれました。主に経営学部の学生を相手に実践経営学のような講義をやっていただけませんか?」
田中部長は私が創業以来10年連続の赤字で倒産寸前の崖っぷち状態だったハレックス社の経営を僅か3年間で黒字経営に転換して、15年間社長を務めたということをご存知だったので、そういうご依頼をいただいたのですが、そのご依頼に対して、私は次のような回答をさせていただきました。「田中さん、本屋に行ったら経営に関する本がいっぱい並んでいるでしょ。あれってなんでだかご存知ですか? それってどの本も正解じゃあないってことです。どれか1つの本が正解なら、その本しか売れません。いっぱいいろんな本が並んで売られているということは、どれも正解じゃあないってことです。なので、そんな無責任なこと、私からは教えられません。しかし、そういうお声を掛けていただいたことは光栄なことですので、少しお時間をいただけますか? 私なりに何が教えられるのか考えてみます。」NTTデータの複数のグループ会社の顧問をお引き受けしたのも、これからはビジネスの現場を離れて、次の世代を担ってもらわないといけない若い人達の育成に力を注いでみようと思ったから。なので、郷里愛媛県の若者達の育成に力を貸してほしいという田中経済労働部長(当時)からのご依頼は嬉しかったですね。
検討のご依頼のあった愛媛県寄附講座は県庁の経済労働部が主管部署になるとのこと。その経済労働部の主たる役割は、愛媛県の地域経済の活性化を図り、雇用を増やすとともに勤労者福祉の向上を図ること。ということなので、まずは愛媛県の産業の状況について調べることから着手しました。
愛媛県企画振興部が発表している令和元年度愛媛県県民経済計算によると、令和元年度における愛媛県の1人あたりの県民所得は2,717千円で、全国平均(3,181千円)を大きく下回っており、四国4県でも香川県・徳島県の後塵を拝しています。愛媛県の県内総生産(名目)は四国全体の約5割に迫る約5兆1,482億円(令和元年)で、その産業構造を生産額ベースで見ると、第1次産業(農林水産業など)が約2.2%、第2次産業(鉱業、建設業、製造業など)が約30.0%、第3次産業(卸売・小売業、運輸業、情報通信業、金融・保険業、サービス業など)が約67.6%となっています。1人あたりの県民所得を上げるためには、県民総生産の2/3以上約67.6%を占める第3次産業、特にその中でも比較的労働単価の高いIT産業をこれまで以上に活性化して、雇用を増大する必要があるのではないか…と考えました。次に、その活性化したIT産業が生み出すソリューションの提供力で、県全体の産業の生産性を向上させる…そういうシナリオです。誤解がないように言っておきますと、全国平均と愛媛県との1人あたりの所得の大きなギャップ、私はこれを決して悲観的には捉えておりません。愛媛県という地域と県民の皆さんの潜在的なポテンシャルの高さを考えると。このギャップは“伸びしろ”、それも十分追いつき、追い越すことができる“伸びしろ”だと、極めて前向きに捉えています。
で、その愛媛県のIT産業ですが、これまではお客様が発注した情報システムの受託開発、あるいは“ニアショア”と言って、首都圏や関西圏の大手IT企業の下請けとして、開発業務の部分的もしくは全部を外注してもらうことが事業の大きな柱でした。私はそれを否定するつもりはありませんが、それではあくまでも“受け身”の事業展開。こちらから積極的に市場を開拓していって事業規模を拡大する…といった展開を期待するべくもありません。地元IT企業の業績を拡大していくためには、お客様が抱える経営上の課題や業務上の課題を発見・分析し、解決策を提案、そしてその解決策の実現までをも一連のサービスとしてご提供するソリューション提供企業に脱皮していく必要があります。ですが、“言うは易し”で、お客様が抱える課題を発見・分析し、解決策を提案するということは、お客様のビジネスやサービス、さらには組織に関する高い知識や分析スキルを必要とするため、あくまでもお客様の外部に位置するIT企業でできることは限られています。お客様の抱える課題はお客様ご自身が中心となってある程度発見・分析を行っていただき、解決策をご提案する段階からIT企業が深く関与していく…というスタイルが現実に合っているし、より効果的だと判断したわけです。これにより愛媛県内のITマーケットを拡大し、県内のIT企業もそのマーケットの拡大にあわせて、事業形態をソリューション提供企業に変革するとともに事業規模も拡大していけるのではないか…と考えたわけです。言ってみれば、地元大学の講義をスタートにして、ITビジネスやデジタルビジネスの“地産地消”の仕組みを創り上げることにチャレンジしてみようとしたわけです。
ということで、愛媛県寄附講座の主たるテーマをITやデジタルに定め、講座の設計をすることにしました。松山大学は大正12年(1923年)に創立された松山高等商業学校を母体とする大学で、経済学部、経営学部、人文学部、法学部、薬学部の5学部6学科で構成されています。私は大学の文系や理系の区別なんて昭和の時代の遺物くらいにしか思っていないのですが、いわゆる文系学部が主体の大学です。これで思いっきり“割り切り”ができました。工学部をはじめとした理系の学部の学生さんに対しては、どうしても“技術系スキル”を持った人材の育成を中心に講座を組み立てがちなのですが、文系の学生さんが相手ということで、ITを活用できる“ビジネス系スキル”を持った人材を育成することをコンセプトにして講座を組み立てることにしました。文系の学部の学生さんは、卒業後、県内の幅広い分野の業種業態の企業に就職することになり、ITのことをある程度知ってる人材が県内の幅広い分野の業種業態の企業に散ることになりますから、そこで愛媛県内企業におけるITレベルの底上げとITマーケットの創出に間違いなく結びつくと思ったわけです。もちろん、その中から県内のIT企業に就職してくる学生さんが出てきてくれたら、それはそれで嬉しいな…とのIT業界出身者としての“打算”もありました。
松山大学文教キャンパスです。 |
松山大学文教キャンパスの正門近くに立つ松山大学の創始者の1人、新田長次郎翁の銅像です。私は講義のために正門を通るたびに、素晴らしいチャンスを与えていただいたこの新田長次郎翁の銅像に一礼するようにしています。 |
ITを活用できる“ビジネス系スキル”を持った人材を育成するというために、講座の主軸に据えたのが『サービスデザイン』。すなわち、「デザイン思考」という考え方、方法論の普及ということでした。デザイン思考とは、デザイナーがデザインを考案する際に用いるプロセスを、ビジネス上の課題解決のために活用する考え方のことです。前例のない課題や未知の問題に対して最適な解決を図るための思考法として、欧米などでは10年ほど前から注目されている考え方です。ユーザー視点に立ってサービスやプロダクトの本質的な課題・ニーズを発見し、ビジネス上の課題を解決するための思考法とも言えるもので、DX (Digital Transformation)が求められるようになって、やっとこのデザイン思考に注目が集まるようになってきました。デザイン思考が注目されるようになった背景としては、市場構造の変化があります。これまで、製品やサービスなどを開発する現場では、マーケットやユーザーニーズを調査し、仮説を設定・検証して製品を開発するという、「仮説検証型」のアプローチが主流でした。ただ、変化が激しく未来の予測が難しくなった「VUCAの時代」では、このスタイルがもはや通用しなくなってしまっているように思います。リサーチを行っても、課題の本質を迅速に捉えることが難しい案件が急増しているためです。また、急速な技術革新により、社会構造が大きく変化していることも見逃せません。それらの結果として、イノベーションを導きやすい「デザイン思考」という考え方がクローズアップされていると言えます。私はこれまで大手IT企業の営業としてお客様と接していて、漠然と「デザイン思考」への転換の必要性を感じていましたし、気象情報会社の社長としては、まさに「デザイン思考」を主軸に据えて、自社の事業の定義を書き換えるような変革をやり続けてきました。そういうこともあって、愛媛県寄附講座のコンセプトや講義内容を検討すること自体から、「デザイン思考」の考え方を取り入れたつもりです。
(注: VUCAとは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった造語で、社会やビジネスにとって、未来の予測が難しくなった現代社会の特性を表しています。)
「デザイン思考」のプロセス |
愛媛県寄附講座の検討の依頼を受けて1ヶ月後に講義カリキュラムの案を含む企画書を作成し、それを愛媛県経済労働部に赴いて説明したところ、すぐにご理解いただいて、企画案を全面的に“即採用”ということになりました。そこで、次に細部の詰めの設計に移ったわけですが、最初に行ったのが講師陣の編成でした。私は今も埼玉県に自宅があることから、私が90分の講義を15コマ全て行うのはさすがに厳しいな…ということもあり、県内のIT企業に講師派遣の協力をお願いすることにしました。NTTデータ四国の顧問として約半世紀ぶりに松山に戻ってきて感じたことは、地元愛媛にも、なかなか面白くて勢いのあるIT企業、それも従来からの受託開発中心の企業ではなく、ソリューション提供に軸足を置いていたり、脱皮を目指しているIT企業が幾つもあるな…ということ。ただ残念なことに、規模が小さいが故に活躍の場が限られていて、その存在が広く知られていないこと。これでは私が目指すITビジネスやデジタルビジネスの“地産地消”の仕組みを創り上げる上では大きな障壁になります。また、IT企業サイドにとっても優秀な学生さんを採用したくとも、存在が知られていないのであれば、ほとんど集まりません。これではせっかく育成した優秀な学生さんの県外流出に歯止めが効かず、愛媛県寄附講座の本来の意義にそぐわなくなりかねません。ということで、愛媛県経済労働部の担当者さんとご一緒に企画書を持って愛媛県内のIT企業10社ほどに講師派遣のお願いに伺ったのですが、どの会社の社長(あるいは経営幹部)もすぐに趣旨にご賛同いただき、講師派遣の依頼をご快諾いただきました。依頼文には、講師はできたら松山大学の卒業生が望ましい…という一文を入れたのですが(学生さんに自分の将来の姿をイメージしてもらうため)、中には「後輩のためなら、自分が登壇します」と言っていただいた松山大学の卒業生の社長が数名いらっしゃたりもしました。また、依頼文には、女性、あるいは外国人の講師も探しています…という一文も入れさせていただきました。特に、外国人の講師は「四国の愛媛の企業でも、こうして世界に繋がっているんだ」ということを知っていただく上で、重要だと思いましたから(実際、地元IT企業に勤務する女性管理職や外国人社員の方にも登壇いただいています)。
こうして約1年間の準備期間を経て、15コマの講義をプロデューサー兼任の私と地元IT企業、それと東京から招聘する私の友人2名(どちらもDXとサービスデザインの分野で全国的に有名な専門家)で受け持つ愛媛県寄附講座「文系学生のための最先端IT入門」が2019年度の後期講義(9月下旬〜翌年の2月上旬)でスタートしました。初年度は対面での講義だったのですが、2年目(2020年度)のすべての講義と3年目(2021年度)の一部の講義は新型コロナウイルスの感染拡大の影響でオンラインによる講義となりましたが、聴講してくれた学生さんの反応や感想を参考に毎年のように改良を重ね、今に至っています。
この愛媛県寄附講座は、当初は2019年度から3年間の時限施策ではあったのですが、登壇いただいた講師の皆さんの頑張りのおかげで、聴講してくれた学生さんの反応が極めていいことと、政府(岸田文雄内閣総理大臣)が2021年6月に打ち出した「デジタル田園都市国家構想」において、「2026年度末までに、デジタル推進人材230万人育成を目指す」と明記されていることもあって、4年目以降の延長が早々と決定。くわえて、2022年度から愛媛大学、松山東雲女子大学、松山東雲短期大学への横展開も始まりました。中でも、松山東雲女子大学と松山東雲短期大学では1年生全員の必須科目になっているところが、特筆すべきところです。さらに、2023年度からは聖カタリナ大学や2022年4月に松山市に開校した人間環境大学 総合心理学部にも展開されることが決まり、愛媛大学では工学部をはじめとした理系学部の学生さんも対象とした全学共通講座に“格上げ”されることにもなりました。これで愛媛県内のほぼすべての大学で、デジタル人材育成に関わらさせていただくことになりました。また、愛媛大学に今年4月に開設される新しい大学院修士課程コース「地域レジリエンス学環」にもなんらかの形で関わってほしいとの依頼も受けています。この地域レジリエンス学環は、理系や文系の垣根を越えて、地域の課題を解決できる人材を養成することを目的に設置されるもので、そこにもデジタルエンジニアリングやデータサイエンスといった技術やサービスデザインの考え方の活用が重要な鍵を握ります。このように「ITやデジタルを活用できる“ビジネス系スキル”を持った人材を育成する」という明確な共通コンセプトを持って、自治体(県)が主導してデジタル人材育成に積極的に取り組んでいる都道府県は、現在のところ愛媛県だけではないか…と私は思っています。
こうした流れの中、昨年末の12月19日、愛媛県は松山大学、愛媛大学、松山東雲女子大学、人間環境大学という県内4つの大学と覚書を締結し、連携を進めていくことになりました。覚書には、デジタル技術を生かして地域で活躍できる人材の育成に向けて、教員や学生の人的交流や施設の相互利用など6つの項目での連携が盛り込まれていて、今後は、情報分野の学部や大学院の修士課程コースの新設など具体的な施策を検討していくということのようです。県によるとデジタル人材の育成に向けて、自治体が地元の国立大学や私立大学と連携することは全国的にも先駆けた取り組みだということのようです。
https://www.ehime-np.co.jp/article/news202212190076 県と県内4大学デジタル人材育成確保へ連携協力の覚書締結(愛媛新聞2022年12月19日)
愛媛大学城北キャンパスです。 |
松山東雲女子大学・短期大学の桑原キャンパスです。 |
私の講義風景です(愛媛大学) |
さる11月20日に投開票が行われた愛媛県知事選挙では、現職の中村時広候補が9割を超える得票率での圧勝で、連続4回目の当選を果たしました。報道によると、4選を果たした中村時広知事は「多くの皆様への感謝の気持ちで心がいっぱいだが、すぐに仕事を始めなければならない緊張感が今はある。公約は決して口約束ではなく、実行に移して期待に応えると訴えてきた。明日から全力投球することをお約束する」と述べた…と書かれています。その中村時広知事が公約に掲げた「政策の三本柱」は次の3つです。
① 西日本豪雨災害からの復興と防災・減災対策
② 人口減少対策
③ 地域経済の活性化
このうち、公約の③地域経済の活性化のところには、このように書かれています。
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③地域経済の活性化
「政策課題への挑戦」で示すように、実需の創出に徹底的にこだわりつつ、愛媛の地域特性に応じた産業立地の強みを活かしながら、戦略的な産業展開を図ります。農林水産分野では、農林水産業の振興とブランド化、販路拡大等による「儲かる農林水産業」
を振興します。観光分野では、世界から選ばれる地域を目指します。さらに、世界の、特にアジアの成長を取り込み、地域経済の活性化を図ります。また、地域産業のデジタル変革と、それを支えるデジタル人材の育成は、今後の地域経済の活性化に不可欠です。令和4年2月に発表した「あたらしい愛媛の未来を切り拓くDX実行プラン」に基づき、DXの推進と、人材育成を車の両輪として力強く進めます。
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一番最後に書かれているデジタル人材の育成に関しては、EDSのメンバーが中心となって、まさに県から依頼を受けた“実働部隊”として、松山大学や愛媛大学等での愛媛県寄附講座の講師を務めさせていただいておりますし、松山DX勉強会の運営を通して、社会人のデジタル人材育成にも取り組まさせていただいております。
また、中村時広知事の公約の③地域経済の活性化の項の一番最初に書かれている「実需の創出に徹底的にこだわりつつ」という言葉も、私が持論として常に言い続けている「とにかくマーケット(需要)の創出がまず先! いくら優れた技術があったとしても、そこにマーケットがないと何も始まらん!」に繋がります。とにかく、デジタルマーケット(需要)の創出こそが、愛媛県内のDX推進において、まず最初に取り組むべき重要な課題であると私は考えています。
知事の公約ということは、これから最低でも4年間は愛媛県内においてこのデジタル化に向けての動きは続きますし、ドンドン加速していくものと思っています。その加速の勢いは、デジタル人材育成関連の愛媛県寄附講座の対象大学の拡がりに現れています。まずはデジタルマーケットの創出に向け、私も微力ながらお手伝いさせていただきます。目指すはデジタルサービスを“地産地消”するマーケットを、愛媛県内で1日も早く創出することです! 愛媛県はその潜在的なポテンシャルを十分に秘めている、と私は思っています。とにかく、愛媛の未来は明るい!…です。現在私は自宅のある埼玉県さいたま市と実家のある愛媛県松山市との二重拠点生活を送っているのですが、今年はこれまで以上に愛媛にいる時間が増えそうです。
【追記】
私のコラム『晴れ時々ちょっと横道』も平成26年(2014年)10月2日に「第1回:はじめまして、覚醒愛媛県人です」を掲載させていただいてから連載9年目に入り、今回の令和5年(2023年)1月5日号が、記念すべき連載第100号という1つの区切りの回を迎えることができました。連載開始当初は、正直、こんなに長く連載を続けることになるとは思いもしませんでした。これもひとえにお読みいただいてくださる読者の皆様の応援のおかげです。ありがとうございました。
連載が100回という大台を超えてくると、さすがにネタ探しに苦労するようになってきていますが、そのネタ探しという目的をもってアンテナ感度を高めているおかげで、私自身も郷里愛媛県のことを知るいいキッカケになっていると感じています。まぁ、調べれば調べるほど、愛媛県は底なしの魅力を秘めた実に面白いところです。
引き続き、皆様に飽きられるまでは連載を続けていくつもりでおりますので、今後ともお付き合いのほどを、よろしくお願いいたします。