2020年8月15日土曜日

ふるさとの訛なつかし停車場の…

 公開日2019/4/04

[晴れ時々ちょっと横道]第55回:
ふるさとの訛なつかし停車場の…

先日、東京駅八重洲南口にある高速バスターミナルの横を歩いていて、出発を待つ全国各地へ向かう何台ものバスの群れの中に、故郷四国のJR四国バス(正しくはジェイアール四国バス”)の姿を見掛け、思わず足を止めて、そのバスが出発して姿が見えなくなるまで、しばらく眺めてしまいました。大都会東京のど真ん中で、故郷で見慣れたバスを見掛けると、懐かしさでメチャメチャ嬉しくなってしまいます。既に20時を過ぎて、周囲は暗くなっていたのですが、白い車体に水色と黄色の斜めストライプの入った塗装のJR四国バスのスーパーハイデッカー車「三菱ふそう・新型エアロクイーン」だけは明るく大きく光り輝いて見えました。このJR四国の高速バスの車体塗装、四国らしさを感じさせる全国でもトップクラスの秀逸な塗装ではないかと、私は勝手に思っていて、好きです。

JR四国バスのスーパーハイデッカー車「三菱ふそう新型エアロクイーン」です。

LED表示の行き先を見ると、なんとなんとの『ドリーム松山号 松山駅経由JR松山支店行き』(^^)v 東京ディズニーランド始発で、東京駅八重洲南口を出発すると、一旦新宿駅南口にある新宿高速バスターミナル(バスタ新宿)に立ち寄り、その後、東名高速道路、名神高速道路、中国自動車道、山陽自動車道、神戸淡路鳴門自動車道(淡路鳴門大橋)、高松自動車道、松山自動車道等を一晩(12時間)かけて走り、途中の道路状況にもよりますが、時刻表通りだと翌朝の午前829分にJR松山駅に到着します。所要時間は12時間9分。走行距離は869km。現在日本最長の高速バス路線である西日本鉄道(西鉄)の『はかた号』(新宿高速バスターミナル~博多バスターミナル)1,150kmには及びませんが、間違いなく日本で五指に入る長距離バス路線です。(かつては西武観光バスと西鉄高速バスが運行する『Lions Express(福岡天神バスターミナル~大宮駅西口間)の走行距離が1,170kmと日本最長でしたが、残念ながら数年前に運行休止になっています。)

行き先表示は『ドリーム松山号 松山駅経由JR松山支店行き』。おおっ!!

東京駅からは若い人や家族連れを中心にそれなりの数の乗客が乗り込みました。耳に馴染みのある松山訛りの言葉も聞こえてきます。なぁ~んか心地いいです。車体下部の荷物スペースに運転士が乗客の荷物を積み込んでいます。『ドリーム松山号』は東京ディズニーランドが始発なので、荷物スペースには見慣れた“夢の国”のお土産袋が幾つも積まれています。深夜を走行するため既に窓にはカーテンがかかっているので車内の様子はよくは分かりませんが、東京駅八重洲南口バスターミナル発車時点でほぼ満席のようです。

次々と乗客が乗り込みます。聞き慣れた松山訛りの言葉が聞こえます。

鉄道マニアと言うよりも“公共交通機関マニア”の私は、バスも趣味の対象としているのですが、実は、残念ながらこれまで一度も『ドリーム松山号』を利用したことがありません。東京羽田空港と松山空港の間にはJALANA6往復ずつの112往復。それに成田空港と松山空港の間にLCCのジェットスターの13往復を加えると、計115往復の飛行機が、首都圏と愛媛松山の間を空路で結んでいて、両空港間は1時間ちょっとの実フライト時間で移動できるので、首都圏と松山間の移動には空路を使うのが一般的になっています。私もこの30年ほど、松山との移動には空路ばかりを利用してきました。何度か出張先の大阪から松山に移動することもあったのですが、その際にも利用したのは空路でした。(大阪からでもそんな感じです。鉄道利用の場合、岡山までは新幹線で速いのですが、そこから先は在来線で時間もかかるので、どうしても時間優先で空路利用ということになってしまっています)

JR四国バスのこの背面、それも左右少し斜めから見た塗装が好きです。

東京駅をはじめとした首都圏と故郷松山の間に深夜高速バスが走っていることは以前から知っていて、いつかはそれに乗って松山に帰ってみたい…と思ってはいるのですが、いまだそれは実現していません。このところ毎月のように松山に帰省しているので、近いうちに深夜高速バスを利用して帰省してみようかな…と思っています。旅程に多少の変化は求めたいですし、所要時間12時間9分という空路利用では味わえない故郷松山までの距離というものを肌身で実感してみたいですものね。(最近はシートも改良されて、随分と乗り心地が良くなったと聞いていますし。)

首都圏と故郷・愛媛を結ぶ深夜高速バスの路線としては、この東京駅八重洲南口2020分発のJR四国バスの松山駅行き高速バス(JRバス関東との共同運行便)のほかにも、新宿駅南口の新宿高速バスターミナル(バスタ新宿)1950分発で松山市駅経由八幡浜行きの伊予鉄道の高速バス(オレンジライナーえひめ:西東京バスとの共同運行便:走行距離950km。おそらく日本で3本の指に入る長距離路線)がありますし、渋谷マークシティ5階からは2020分発で今治桟橋行きの瀬戸内運輸(せとうちバス)の高速バス(パイレーツ:東急トランセとの共同運行便:走行距離832km)も出ています。

新宿高速バスターミナル(バスタ新宿)で発車時刻を待つ松山市駅・道後温泉経由八幡浜行きの伊予鉄道の高速バス「オレンジライナーえひめ」です。

 

渋谷マークシティ5階高速バスターミナルで発車時刻を待つ新居浜経由今治桟橋行きの瀬戸内運輸(せとうちバス)の高速バス「パイレーツ」です。

さらに数年前までは、私が住む埼玉県さいたま市の大宮駅と愛媛県南部の宇和島市を結ぶ宇和島自動車の高速バス(ウワジマエクスプレス:西武観光バスとの共同運行便)が運行されていました。時々帰宅途中にその宇和島自動車の高速バスを自宅近くの新大宮バイパスで見掛けることがあり、行先を示す宇和島というLED表示を見て、ビックリしたものです。大宮駅発ですから走行距離はゆうに1,000kmを越えていて、どう考えてみても所要時間は15時間近くかかるのではないかと思われました。当時は日本で3番目に長いバス路線と言われていました。凄いです。

 こうした生まれ育った故郷で見慣れたバスを大都会の喧騒の中で見掛けると、首都圏に住んでいても故郷愛媛としっかりと繋がっているんだなぁ~…ってことを実感し、ホッと心が癒されます。「これに乗れば、翌朝には愛媛。いつでも故郷に帰れる。じゃあ、もうちょっと頑張ってみるか…」ってね。故郷を遠く離れて首都圏に出てきて頑張っている愛媛県人にとっての“心の糸”のようなものですね。

 この感情は海外の空港で日本のJALANAの機体を見掛けた時の感情と似てはいますが、バスという日常的に間近で見掛ける乗り物だけに、私のような地方出身者にとってはインパクトはより強いものがあります(^^)v これは愛媛県出身の私だけでなく、きっと他の地方出身の方も同じ感情を持つのではないかなと、私は思っています。

 「ふるさとの 訛なつかし 停車場の 人ごみの中に そを聴きにゆく」

 これは歌人・石川啄木の有名な短歌で、「都会に住んでいると、遠く離れた故郷の東北訛りが懐かしくてたまらないことがある。そんな日、賑やかな上野駅の人ごみの中へと、そのお国訛りを聴きに出かける」という状況と心情を歌にしたものです。東京と地方とを直接結ぶ夜行列車がほぼ絶滅した今、停車場(上野駅のようなターミナル駅)が深夜高速バスが発着する高速バスターミナルに代わってしまったようなところがありますが、東京で暮らす地方出身者の心情は、今もなんら変わりません。

この時間帯は四国方面行きの深夜高速バスが次々と発車していきます。なぁ〜んか嬉しい。

東京駅八重洲南口で2020分発の『ドリーム松山号 JR松山駅行き』を見送った直後、今度は2030分発『ドリーム高知号 高知駅経由はりまや橋行き』のJRバス関東の2階建てダブルデッカー車「三菱ふそう・エアロキング」が入線してきました。四国方面へ向かう深夜高速バスは、そのあと、2050分発『ドリーム高松号 高松駅経由観音寺駅行き』、2110分発『ドリーム徳島号 徳島駅経由阿南駅行き』と続きます。この日は急いで帰る必要もなかったので、しばらくそれらの四国方面行きのバスが発車していく様子を眺めてから帰路につきました。帰宅途中の電車の中では、なぁ~んかホッコリとした優しい気持ちになれました(^-^)v

JRバス関東のダブルデッカー車(2階建て車)「三菱ふそうエアロキング」を使用した『ドリーム高知号 高知駅経由はりまや橋行き』です。かつての高速道路網の王者、JRバスのフラッグシップも導入開始から随分と年月が経過し、いささかくたびれた感じは受けますが、それでも圧倒的な存在感を周囲に放っています。


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