2020年8月17日月曜日

松山行きフェリー(その1)

 公開日2019/6/06

[晴れ時々ちょっと横道]第57回:
松山行きフェリー(その1)

広島宇品港です。

私は、現在、松山市に本社がある会社のほかに、広島市に本社がある会社の顧問も務めさせていただいていて(ほか、東京と千葉県松戸市に本社がある2社の顧問も)、間違いなくいつか乗る機会があるだろうなと思っていた乗り物に、先日ついに乗ることができました。それが松山観光港と広島宇品港とを結ぶフェリーです。

松山行きフェリーは10番乗り場から出港します。

現在、松山観光港と広島宇品港との間には石崎汽船(本社・松山市)と瀬戸内海汽船(本社・広島市)の共同運航でクルーズフェリーと呼ばれるフェリーが110往復と、スーパージェットと呼ばれる高速船が112往復運航されています。松山観光港と広島宇品港との間の航路距離は66.2km。そこをスーパージェットは最短1時間8分、クルーズフェリーは最短2時間25分で結んでいます。

 先日、その広島宇品港より松山観光港行きのクルーズフェリーに乗船しました。高速船スーパージェットを利用するという選択肢もあるのですが、その日は松山に着いていればよく、瀬戸内海の船旅をノンビリと楽しみたいという思いもあったので、敢えてフェリー便のほうを選びました。

 乗船したのは広島宇品港1355分発の便。この便、途中、呉港中央桟橋に寄港し、松山観光港にはまだ明るいうちの1635分に到着します。この日の広島地方は朝からあいにくの雨模様だったのですが、正午頃にはその雨もあがり、出港直前には晴れ間も出てきました。多少雲が多いものの、快適な船旅が楽しめそうです。私の「晴れ男のレジェンド」はこの日も健在です (雨だったら高速船スーパージェットに乗るつもりでした)

 この日、乗船したフェリーは石崎汽船の「旭洋丸」です。総トン数696トン、全長55.9メートル、全幅13.1メートル、ディーゼル機関2(出力2,600PS)を搭載し、航海速力は14.5ノット(時速約27km)。旅客定員は400名、乗用車換算で40台の車両を積載することができます。

私が乗った石崎汽船のクルーズフェリー「旭洋丸」です。総トン数696トン、全長55.9メートル、全幅13.1メートル、ディーゼル機関2(出力2,600PS)を搭載し、航海速力は14.5ノット(時速約27km)。旅客定員は400名、乗用車換算で40台の車両を積載することができます。 (広島宇品港にて)

現在、松山観光港〜広島宇品港間の航路には瀬戸内海汽船の「石手川」と「四万十川」、石崎汽船の「旭洋丸」と「翔洋丸」の4隻のフェリーが就航しています。
こちらは高速船スーパージェット。瀬戸内海汽船の「宮島」です。総トン数189トン、全長33.8メートル、幅9.8メートル、ディーゼル機関2(出力5,000PS)を搭載し、航海速力32.0ノット(時速約60km)。旅客定員は156名です。後ろは石崎汽船の「瑞光」です。 (広島宇品港にて)


現在、松山観光港〜広島宇品港間の航路(スーパージェット)には瀬戸内海汽船の「道後」と「宮島」、石崎汽船の「瑞光」と「祥光」の4隻の高速船が就航しています。

かつて、瀬戸内海を南北に横断して愛媛県の各港と対岸の広島県の港とを結ぶ短距離航路は、この広島宇品港〜(呉港中央桟橋)〜松山観光港航路の他にも幾つかあり、幾つかの海運会社がフェリーや高速船をひっきりなしに運航していました。私が記憶している航路だけでも、

●堀江港(松山市)〜仁方港(呉市)航路…国鉄仁堀連絡船

●堀江港(松山市)〜阿賀港(あがこう:呉市)航路

●今治港〜大長港(おおちょうこう:大崎下島)〜呉港中央桟橋〜広島宇品港航路

●今治港〜御手洗港(みたらいこう:大崎下島)〜大長港(大崎下島)〜豊島港(豊島)〜呉港中央桟橋航路

●今治港〜大長港(大崎下島)〜久比港(くびこう:大崎下島)〜豊島港(豊島)〜川尻港(呉市)航路

●今治港〜大長港(大崎下島)〜久比港(大崎下島)〜豊島港(豊島)〜宮盛港(上蒲刈島)〜仁方港(呉市)航路

●今治港〜友浦港(大島)〜木浦港(伯方島)〜岩城港(岩城島)〜佐島港(佐島)〜弓削港(弓削島)〜土生港(因島)〜田熊港(因島)〜重井港(因島)〜尾道港航路

●今治港〜瀬戸田港(生口島)〜三原港航路

●波方港(なみかたこう:今治市)〜宮浦港(大三島)~竹原港航路

●新居浜港〜四阪島港(四阪島)〜弓削港(弓削島)〜尾道港航路

等がありました。 

かつて、瀬戸内海を南北に横断して愛媛県の各港と対岸の広島県の港とを結ぶフェリー航路は幾つもありました。

これらの航路は本州と四国を結ぶ本州四国連絡橋、特に広島県尾道市を起点に向島・因島・生口島・大三島・伯方島・大島などを経て愛媛県今治市に至る延長59.4kmの高規格幹線道路「西瀬戸自動車道(通称:しまなみ海道)が平成18(2006)429日に全通したことに伴い、航路廃止、あるいは橋の架かっていない島嶼部とを結ぶ区間だけへの航路縮小に追い込まれ、今ではこの石崎汽船と瀬戸内海汽船が共同運航する広島宇品港〜(呉港中央桟橋)〜松山観光港航路のみになっています (広島県以外では隣県の山口県柳井市の柳井港と松山市の三津浜港を結ぶ防予フェリーと周防大島松山フェリーが共同運航する航路(113往復)が残っています)

 しまなみ海道が開通して本州と四国が地続きになったことによるもので仕方ない部分もありますが、幾多のフェリーや高速船が白い航跡を残しながら頻繁に行き交う往時の繁栄を知る者としては、寂しい感じもしています。

高松港と高松市沖の女木島・男木島を結ぶ雌雄島海運のフェリー「めおん2」のペーパークラフトです。「めおん2」は総トン数264トン、全長33.3メートル、全幅9.5メートル、航海速力10.5ノット、旅客定員250名、乗用車搭載15台という赤く小ぶりの船体の可愛らしいフェリーで、瀬戸内海の島嶼部航路で使われている典型的な小型フェリーです。過日、高松港から神戸港まで乗船したジャンボフェリーの船内の売店でキットを購入しました。愛媛県の港を発着するフェリーのペーパークラフトキットがあれば、すぐに購入して製作するのですが

高松港と神戸港の間を小豆島坂手港経由で結ぶ加藤汽船のジャンボフェリー「こんぴら2」のペーパークラフトです。「こんぴら2」は総トン数3,639トン、全長115.90メートル、幅20.00メートル、旅客定員475名。車両積載数は8トントラック換算で61台という大型フェリーで、高松港と神戸港の間を最短約4時間で結んでいます。


山口県柳井市の柳井港と松山市の三津浜港を結ぶ防予フェリーの「おれんじじゅぴたー」です。途中、周防大島の伊保田港に寄港する便(14往復)は周防大島松山フェリーにより運航されています。(三津浜港にて)
 

また、瀬戸内海を東西に横切り、愛媛県と大阪・神戸を結ぶ阪神航路の中距離フェリーも、かつては

●関西汽船(大阪南港〜神戸港〜今治港〜松山観光港〜別府港航路)

●ダイヤモンドフェリー(大阪南港〜神戸港〜今治港〜松山観光港〜大分港航路)

●三宝海運(神戸港〜今治港〜松山観光港航路)

●愛媛阪神フェリー(神戸港〜今治港〜松山観光港航路)

●バンパックフェリー(東神戸港〜川之江港〜新居浜港航路)

……と各海運会社が総トン数3千トン以上、中には1万トンを超えるような大型のフェリーを各航路にキラ星のごとく投入して激しく顧客獲得競争を繰り広げていたのですが、こちらも昭和63(1988)410日に岡山県倉敷市と香川県坂出市を結ぶ瀬戸大橋が全線開通、さらには平成10(1998)45日に兵庫県神戸市垂水区と徳島県鳴門市を結ぶ明石海峡大橋が全線開通すると相次いで航路廃止に追い込まれ、現在は四国開発フェリー(オレンジフェリー)の東予港(西条市)〜大阪南港フェリーターミナル航路と新居浜東港〜神戸港(六甲アイランドフェリーターミナル)航路のみになってしまいました。 (ちなみに、国交省による分類では航路距離300km以上が「長距離フェリー」、100km未満が「短距離フェリー」、そのあいだが「中距離フェリー」)

 その四国開発フェリー(オレンジフェリー)では、昨年(2018)825日に新造船「おれんじえひめ」が就航しました。この「おれんじえひめ」、総トン数は14,749トン、全長199.9メートル、幅27.5メートル、航海速力19.0ノットの大型船です。車両積載数はトラック180台、モーダルシフトによるトラック需要の増加を見据えて旧船「おれんじ8」より3割増加させています。旅客定員は500名。客室は全室個室になっていて、さながら「動く海上ホテル」。これは日本のフェリーではで初めてのことだそうです。126日には姉妹船『おれんじおおさか』も就航しました。また、新造船「おれんじえひめ」の就航に合わせて、東予港の新フェリーターミナルが供用を開始しました。

 今後、物流における人手不足(労働力不足)の解消及び運賃の抑制のため、従来のトラックによる貨物輸送をフェリーによる海上輸送や鉄道輸送に切り替えるモーダルシフトはますます進みと思われます。また、旅客輸送においても、近年、豪華客船によるクルーズツアーが人気を呼んでいて、飛行機や鉄道からのモーダルシフトは進むと思われます。それを見越しての新造船の就航や新フェリーターミナルの供用開始と推測されますが、かつて栄光を誇った愛媛県発阪神航路の最後に残った灯を絶やさないように、頑張っていただきたいものだと思っています。

 また、私が乗っているこの松山観光港と呉港中央桟橋経由で広島宇品港との間を結ぶフェリー航路でも、今年(2019)8月に、まずは瀬戸内海汽船が28年ぶりとなる新造船を就航させるそうで、来年(2020)にも新造船をさらに1隻を導入する予定なのだそうです。新造船は総トン数980トンと従来の船よりも幾分大型になるものの、旅客定員は300名、車両積載台数は35(乗用車換算)と幾分少なくなっています。これは、フェリーのあり方を単なる移動手段ではなく、瀬戸内海ならではのゆったりとした船旅を乗客が思い思いに楽しめる公園のようなものにしたいという新しいデザインコンセプト「PARK on the SETONAIKAI」に基づくもののようです。この瀬戸内海汽船の新造船、従来のフェリーと一線を画す、曲線基調の斬新な外観デザインが特徴です。なかなかカッコいい船です。石崎汽船も、独自コンセプトにより同時期に2隻の新造船を導入する予定で、来年(2020)の夏には、同航路へ就航中の4隻全てが新造船に置き換わる予定なのだそうです。瀬戸内で生まれ育った者にとっては、瀬戸内海を行き交うフェリーの復権は元気をもらえる嬉しい話題です。

瀬戸内海汽船が今年(2019)8月に就航させる予定の新造船です。従来のフェリーとは一線を画す、曲線基調の斬新な外観デザインがなかなかカッコいいですね。

アメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズは、毎年、世界中の記者などの情報を基に、その年に行くべき旅行先として世界各地の都市や地域を紹介しているのですが、今年(2019)19日に発表された「2019年に行くべき52か所」では、日本からは唯一「瀬戸内の島々」が選ばれ、それも世界第7位という上位にランクインしました。世界の人達も瀬戸内海の美しい景観に注目してくれているわけで、そのご期待にお応えするためにも、この新しいコンセプトに基づく新造フェリーの就航には大いに期待しているところです。

ちなみに、愛媛県発の中距離フェリー航路としては松山観光港と小倉港(福岡県北九州市)を結ぶ四国九州航路を、松山・小倉フェリーが、総トン数約4,200トンの「フェリーくるしま」と「フェリーはやとも2」の2隻で毎日運航しています。この松山・小倉フェリーは「フェリーさんふらわあ」の航路を継承したものです。さらに愛媛県と九州各地を結ぶ短距離フェリー航路としては、佐田岬の先端にある三崎港と「関サバ」「関アジ」の水揚げ港として知られる佐賀関港(大分県大分市)を結ぶ国道九四フェリー(国道197号線の海上区間)、八幡浜港と別府港(大分県別府市)を結ぶ宇和島運輸フェリー、同じく八幡浜港と臼杵港(大分県臼杵市)を結ぶ宇和島運輸フェリーと四国開発フェリー(九四オレンジフェリー)があります。また、愛媛県との県境に近い高知県の宿毛港からは宮崎県との県境に近い大分県の佐伯港を結ぶ宿毛フェリーが出ています。

松山・小倉フェリーの「フェリーはやとも2」です。松山・小倉フェリーは「フェリーさんふらわあ」の松山〜小倉航路を継承したものですが、その前身は関西汽船の神戸〜松山〜小倉航路。花形の阪神航路で運航されていた船です。(松山観光港にて)

広島宇品港を出港すると、フェリーは江田島を進行方向右手に見ながら、広島湾をほぼまっすぐ呉港中央桟橋を目指します。広島宇品港と呉港中央桟橋の間はクルーズフェリーだと45分、高速船スーパージェットだと僅かに23分です。進行方向左手にJR呉線を走る電車と広島呉道路(クレアライン)が見えるのですが、海岸線に沿ってカーブが続く線路や道路と比べ航路がほぼ真っ直ぐなのと渋滞の影響を受けないので、海路は意外と速く呉に行くことができます。天気がいいので、松山観光港までずっとデッキで過ごすことにしました。潮風が心地いいです。

広島宇品港を出港すると、フェリーは江田島を進行方向右手に見ながら、広島湾をほぼまっすぐ呉港中央桟橋を目指します。


……(その2)に続きます。 




 

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