2018年10月12日金曜日

甲州街道歩き【第8回:上野原→犬目】(その4)

緩い下り坂を下っていきます。切通しの道になっていますが、雰囲気はとってもいいです。坂の途中から前方に野田尻宿の街並みが見えてきます。



緩い坂を下りきったあたりが野田尻宿の江戸方(東の出入口)でした。野田尻宿は甲州街道を江戸の日本橋から数えて20番目の宿場です(数え方により諸説あります)。野田尻宿も鶴川宿と同じ正徳3(1713)に誕生した宿場です。幕末期の天保14(1842)の記録によると本陣1軒、脇本陣1軒、旅籠は大2軒、中3軒、小4軒からなる小規模な宿場町でした。明治19(1886)の大火で宿内の町並みはほとんど焼失し、往時の面影を偲ぶことはできませんが、現在でも、表札とともに、万屋、蔦屋、中田屋、鶴屋、紺屋、酒屋といった当時の旅籠を示す屋号を小さく掲げている家があります。また現在も開発はたいしてされておらず、落ち着いた宿場町であったたたずまいを残しています。


ここで旧甲州街道を左に外れて中央自動車道のほうへ歩きます。中央自動車道の高架下のトンネルに入り、階段を登って地表(高速道路面)に出ます。高速道路の側道を歩くのですが、すぐ横をクルマがもの凄いスピードで通り過ぎていきます。ちょっと怖いくらいです。


どこに行くのかな…と思っていると中央高速バスのバス停に出ました。バス停の名称は「中央道野田尻」になっています。バス停の名称は「中央道野田尻」ですが、ここは談合坂サービスエリア(SA)です。


談合坂サービスエリアは中央自動車道の高井戸側からみて最初のサービスエリアです。施設の充実度は日本屈指で、中央自動車道をクルマで走ると必ずと言っていいほど停まるサービスエリアではないでしょうか。私も中央自動車道で甲府や長野方面に行く時は必ずこの談合坂サービスエリアで休憩を取ります。談合坂サービスエリアは上下線で約2km位置が異なり、下り線は高井戸側からみて手前にあります。下り方面の中央高速バスのバス停は談合坂サービスエリアに併設されています (上り方面のバス停は中央自動車道本線上にあります)。なので、ここまでのトンネルや階段、側道は野田尻の町から中央高速バスのバス停までの通路のようです。


この日の昼食は談合坂サービスエリアに駐車している観光バスの車内でお弁当をいただきました。

そうそう、この“談合坂”というサービスエリアの名称ですが、初めて聞いた時、「おいおいおい、もしかして、このサービスエリアは談合で建設しましたよってことなの?」…なぁ〜んて変な心配をしてしまった人もいらっしゃるのではないでしょうか? 談合坂はこのあたりにある地名です。その談合坂という地名の由来にはいくつかの説があって、その由来を書いた石碑がサービスエリアの中に建っています。それによると次の3つの説が有力とのことです。

(説1) 近郊の村の寄り合い場所として、この近辺で話し合い(談合)が行われた。
(説2) 戦国時代に北条氏と武田氏が和議調停などの交渉ごと(談合)をした。
(説3) 武田信玄の娘が北条氏に嫁ぐ際に婚儀の約束事について話し合った(談合)
(説4) この付近にも桃太郎伝説があり、猿、犬、キジが桃太郎の家来になる約束をしてダンゴ(団子?)をもらった。

(説1)(説3)はあり得るかもしれないと思えますが、(説4)の桃太郎伝説だけはありえねぇ〜よなぁ〜。


前方の雲の間から富士山の頂上付近が顔を覗かせています。私は中山道から街道歩きを始めたので、街道歩きと言えば“山”と“峠”というイメージでいます。中山道の場合、荒川を渡って埼玉県に入り、武蔵路を歩くと、左手(西側)に標高2,601メートルの北奥千丈岳を最高峰として標高2,500メートル級の山々が屏風のように立ち並ぶ秩父山地の山々、そして南西遠くに富士山、右手(東側)には筑波山が見えます。群馬県に入って上州路になると赤城山、榛名山、妙義山という上州三山に加えて、浅間山がその迎えてくれます。碓氷峠を越えて信濃路に入ると、浅間山がすぐ間近に見えるところを歩き、佐久平を歩くと次は左手に蓼科山が見えてきます。標高1,200メートルという五街道最高地点の和田峠を越え諏訪盆地に入り、塩尻峠を越えようとすると左手後方()に遠く富士山の姿が見え、塩尻峠からは木曽駒ケ岳や木曽御嶽山も見えます。塩尻峠を下ると景色は一変。右手には乗鞍岳、穂高岳、槍ヶ岳といった標高3,000メートル級の山々が立ち並ぶ北アルプス(飛騨山脈)が見えてきます。そして、その塩尻峠を越えるといよいよ中山道のクライマックスの木曽路。「木曽路はすべて山の中」です。

甲州街道も内陸部を進むので、やはり“山”と“峠”ですね。小仏峠を越えて相模路、そして甲斐路に入ると景色が一変。本格的に「This is 街道歩き」という感じになってきました。そしてついに富士山が間近に見えてきました。甲州・山梨県の山と言えば標高3,776メートル、日本最高峰の独立峰・富士山ですよね。その優美な風貌は日本国外でも日本国の象徴として広く知られています。東京や埼玉で見るよりも遥かに大きい富士山の姿に甲州街道を歩いていることを実感します。甲州街道はこれから甲州街道最大の難所と言われる笹子峠を越えますし、甲府を過ぎたあたりからは前方右手(北側)に赤岳を最高峰に横岳など幾つもの山々で形成される八ヶ岳の美しい山体が、そして左側(南側)には甲斐駒ケ岳をはじめ、標高3,193メートルの北岳を最高峰として、仙丈ヶ岳、塩見岳など3,000メートルを超える山が9つも立ち並ぶ赤石山脈、すなわち南アルプスの山々が見えてくるはずです。待望の富士山の姿が見えたので、その楽しみがますます大きくなってきました。


……(その5)に続きます。

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