2022年6月22日水曜日

鉄分補給シリーズ(その6):伊予鉄南予バス面河・石鎚土小屋線③

公開予定日2022/12/03

 

[晴れ時々ちょっと横道]第99回 鉄分補給シリーズ(その6):伊予鉄南予バス面河・石鎚土小屋線③ 


面河山岳博物館から面河渓を上流に向かって遊歩道を歩いていきます。深い淵の底が透けて見えるほど透明で、若干エメラルドグリーン色をした水が神秘的な雰囲気を醸し出しています。まさに清流、心洗われる風景です。


面河渓を流れる水は深い淵の底が透けて見えるほど透明で、若干エメラルドグリーン色をした水が神秘的な雰囲気を醸し出しています。まさに清流、心洗われる風景です。

切り立った安山岩の岩壁に沿って遊歩道が伸びています。

かつて石鎚スカイラインの建設に伴う落石により渓谷が埋まるという自然破壊が問題化したことがありました。今は時間が経ってその傷痕も“自然治癒”し、素晴らしい渓谷美が戻っています。

 

面河川で最も幅の狭い峡谷である「関門」です。関門には両側から高さ70メートルもの絶壁がそそり立っていて、文字通りの関門になっています。この関門は幅が狭い渓谷であることから、別名「猿飛岩」とも呼ばれており、大正時代に忍者ブームを起こした立川文庫のヒーロー・猿飛佐助の名前の由来となったといわれています。


面河川で最も幅の狭い峡谷である「関門」です。この関門は幅が狭い渓谷であることから、別名「猿飛岩」とも呼ばれています。

関門には両側から高さ70メートルもの絶壁がそそり立っていて、文字通りの関門になっています。


「名勝 面河渓」の碑が立っています。関門は面河渓の記念撮影の場所になっています。


関門の先に「空船橋」が見えます。空船橋は関門に架かる擬木の橋で、空に浮かぶような神秘的な雰囲気が漂う絶景ポイントです。ただ、遊歩道は落石のため、当面の間、通行止めとなっています。なので、その空船橋には行くことができませんでした。


関門の先に「空船橋」が見えます。空船橋は関門に架かる擬木の橋で、空に浮かぶような神秘的な雰囲気が漂う絶景ポイントです。

遊歩道は落石のため、この先の区間は、当面の間、通行止めとなっています。

いったん面河山岳博物館まで戻り、林道(?)を上流方向に歩いていきます。面河山岳博物館から五色河原まで自動車が通れる道路が伸びています。この道路は面河渓が石鎚山系の一帯が石鎚国定公園に指定され、面河渓観光の盛り上がりがピークに達した昭和30(1955)に開通した道路です。とは言え、クルマ1台がやっと通れるくらいの細い道路で、大型車の通行はできません。途中にこのような安山岩の硬い岩盤を掘削して通した岩肌剥き出しの小さなトンネルが3つあります。


いったん面河山岳博物館まで戻り、林道(?)を上流方向に歩いていきます。途中にこのような安山岩の硬い岩盤を掘削して通した岩肌剥き出しの小さなトンネルが3つあります。


安山岩の板状節理ですね。面河渓では第三紀に三波川変成岩帯を覆う石鎚カルデラを形成した火山活動があり、今も直径7キロメートルにわたって安山岩が分布しています。


先ほどの関門です。ここから見ると、左右両側から安山岩の板状節理が発達した高さ70メートルもの岩壁がそそり立っていて、文字通りの関門になっているのが分かります。


先ほどの関門です。左右両側に聳える安山岩の塊は高さが70メートルとあまりに大きすぎて、その全貌を写真に撮ることができません。

前方から、「ロードレーサー」と呼ばれるロードレース専用の自転車に跨った集団がやってきました。先ほど石鎚土小屋から面河渓までバスで下ってくる途中でも、ロードレーサーに跨って、自動車でも苦労するような急勾配の登り坂を登ってくる集団と幾つかすれ違いました。おそらくこの先にある面河渓の駐車場をスタートして石鎚土小屋を目指しているのでしょうね。


前方から、「ロードレーサー」と呼ばれるロードレース専用の自転車に跨った集団がやってきました。先ほど石鎚土小屋から面河渓までバスで下ってくる途中でも、ロードレーサーに跨って、自動車でも苦労するような急勾配の登り坂を登ってくる集団と幾つかすれ違いました。愛媛のサイクリストは半端じゃあないです。

面河川にかかるアーチ型の「五色橋」を渡った先に駐車場があります。橋から眺める「五色河原」の風景に早くも見入ってしまいます。


面河川にかかるアーチ型の橋、「五色橋」です。この五色橋を渡った先に駐車場があります。橋から眺める「五色河原」の風景に早くも見入ってしまいます。

絶景スポットの「五色河原」です。五色河原という地名は五色河原の中心である五色橋近くを流れる面河川が、紅葉の赤色や川底の藻の緑色、花崗岩の白色、水の青、苔の黒色といった五色に彩られることから付けられた地名です。五色河原の名の通り、周辺を取り巻く自然の色の豊かさが印象的なスポットです。


絶景スポットの「五色河原」です。五色河原という地名は五色河原の中心である五色橋近くを流れる面河川が、紅葉の赤色や川底の藻の緑色、花崗岩の白色、水の青、苔の黒色といった五色に彩られることから付けられた地名です。

五色橋のたもとに「面河国民の森」の石碑が立っています。面河渓の手つかずの自然は「未来に残したい日本の自然100選」や「水源の森百選」にも選ばれていますので、まさに国民の森ですね。

その五色河原から面河川沿いに進んですぐのところに見えるのが、断崖絶壁の「亀腹(かめばら)」です。亀腹は高さは約100メートル、幅は約200メートルというほぼ垂直に立つ巨大な花崗岩の一枚岩でできた壁で、まるで亀の腹の部分のように見えるということから亀腹と名付けられたといわれています。春には一帯にアケボノツツジが鮮やかな花色を見せてくれる、面河渓谷を代表する絶景の一つです。


断崖絶壁の「亀腹(かめばら)」です。亀腹は高さは約100メートル、幅は約200メートルというほぼ垂直に立つ巨大な花崗岩の一枚岩でできた壁で、まるで亀の腹の部分のように見えるということから亀腹と名付けられたといわれています。右端にヒトが何人か小さく写っているのですが、そのヒトとの対比で亀腹の大きさをイメージしてみてください。

その亀腹の面河川を挟んだ対岸にある渓泉亭・面河茶屋で、昼食をいただきました。いただいたのはアマゴの塩焼き(甘露煮もあり)、刺身こんにゃく、郷土料理のだんご汁などがセットになった面河定食。目前に奇岩・亀腹がそびえ立つ絶景を眺めながらの食事は格別でした。


亀腹の面河川を挟んだ対岸にある渓泉亭・面河茶屋です。

渓泉亭・面河茶屋でいただいたのは、アマゴの塩焼き(甘露煮もあり)、刺身こんにゃく、郷土料理のだんご汁などがセットになった面河定食です。

この渓泉亭・面河茶屋の店内にはここを訪れた人達が撮影した四季折々の面河渓の風景を撮影した写真が飾られています。面河渓は愛媛県随一の紅葉の名所として知られており、面河渓=秋のイメージが強いのですが、他の季節の面河渓の風景も素晴らしいものがあります。特に素晴らしいのは冬。雪や氷の中の面河渓の風景は幻想的です。渓泉亭・面河茶屋の方の話によると、冬季、石鎚スカイラインは閉鎖されるけど、渓泉亭・面河茶屋まではスノータイヤを履いていれば、ほぼチェーンなしでも自動車で来られるのだとか。さらに、意外だったのは、雨の日に撮影した写真も多くあること。雨の日にだけ現れる渓泉亭・面河茶屋の対岸にある亀腹の岩肌を流れ落ちる滝の風景も幻想的です。わざわざ雨の日に面河渓を訪れる面河通の人もいらっしゃるのだそうです。

また、渓泉亭・面河茶屋の前には登山届を出すポストが置かれています。ここから上流の向かって伸びる遊歩道は、石鎚山への登山ルートの1つで、この渓泉亭・面河茶屋はその登山口にもなっています。


渓泉亭・面河茶屋の前には登山届を出すポストが置かれています。ここから上流の向かって伸びる遊歩道は、石鎚山への登山ルートの1つで、この渓泉亭・面河茶屋はその登山口にもなっています。ポストの左横には長い棒が何本か立てかけられています。自然木のトレッキングポール(登山用の杖)ですね。ご自由にどうぞ…ということのようです。おやっ! ここにもカカシ(案山子)君がいます。

昼食も摂ったので、渓泉亭・面河茶屋をあとにして、遊歩道をさらに上流に向かって歩いていきます。鶴ヶ瀬橋を渡り、対岸の遊歩道を小鳥のさえずりを耳に、木漏れ日を浴びながら歩きます。このあたりが「蓬莱峡(ほうらいけい)」です。白くしぶきをあげる水が、澄んだ青い淵へ流れ落ちています。蓬莱渓は、時に小さな滝を作りながら流れる涼やかな風景が大変に美しい場所です。水流で角が取れた白い岩の中で、川が一層深みを増し青く見える一方で、少し向こうに視線を向けると、対照的に直線的な模様を刻む褐色の岩肌がそそり立っています。まさに渓谷美です。


鶴ヶ瀬橋を渡ります。

蓬莱峡です。白くしぶきをあげる水が、澄んだ青い淵へ流れ落ちています。

この面河川は、日本一の清流であることで有名な仁淀川の源流であることは前述のとおりです。その仁淀川の水は「仁淀ブルー」と呼ばれる緑がかった神秘的な青色(エメラルドグリーン)をしていることで有名です。今回、面河渓に行ってみて、その仁淀ブルーの正体が分かった感じがします。仁淀川の源流である面河川が流れる一帯の地質は中央構造線の南側に中央構造線に沿って細長く分布する三波川変成岩帯に属します。この三波川変成岩帯を代表する岩石は緑泥片岩。緑色をした岩石で、同じく三波川変成岩帯に属する佐田岬半島でよく見かけました。面河渓でもその緑泥片岩をよく見かけます。加えて、三波川変成岩帯では軟玉の翡翠、ネフライトもよく出てきます。おそらくこれら緑色をした岩石の成分が溶け出して神秘的な青色を生み出しているのでしょうね。

このあたりが「紅葉河原(もみじがわら)」です。ここは両岸にカエデ類の木々が茂り、秋には文字通り紅葉に彩られる面河渓を代表する絶景名所の1つです。新緑を映すような鮮やかなエメラルドグリーンの水は、川底まではっきりと見通せる透明度で豊かに流れています。


紅葉河原です。ここは両岸にカエデ類の木々が茂り、秋には文字通り紅葉に彩られる面河渓を代表する絶景名所の1つです。

遊歩道を小鳥のさえずりを耳に、木漏れ日を浴びながら歩きます。このあたり一帯はカエデを中心とした広葉樹林帯です。

新緑を映すような鮮やかなエメラルドグリーンの水は、川底まではっきりと見通せる透明度で豊かに流れています。

渓谷を流れる水の音をお届けできないのが残念です。心を洗われるような素晴らしい水音です。


「下熊渕(しもくまふち)」です。小瀧のような流れと深いエメラルドグリーンが印象的な渕です。残念ながら、樹々の葉に遮られて、写真ではうまくその美しさが撮れていません。


下熊渕です。樹々が邪魔で写真ではよく分かりませんが、小瀧のような流れと深いエメラルドグリーンが印象的な渕です。

「石鎚登山口」への方向を示す標識が立っています。ここを左に分かれる道が石鎚山への登山道で、この登山道は石鎚山の山頂までここから4時間以上もかけて登る上級者向けの登山コースです。登山道は険しい石段から始まるのですが、その石段を見上げると「石鎚神社」の鳥居が立っています。霊峰石鎚山の頂上にある石鎚神社頂上社の一の鳥居ってところなんでしょうね。


「石鎚登山口」への方向を示す標識が立っています。ここを左に分かれる道が石鎚山への登山道で、この登山道は石鎚山の山頂までここから4時間以上もかけて登る上級者向けの登山コースです。

登山道は険しい石段から始まるのですが、その石段を見上げると「石鎚神社」の鳥居が立っています。霊峰石鎚山の頂上にある石鎚神社頂上社の一の鳥居ってところなんでしょうね。


遊歩道はこの「熊渕橋」を渡ったところにある休憩所が終点です。熊渕橋から眺める上流は「水呑み獅子」と呼ばれる場所で、小さな滝が続いています。「水呑み獅子」は岩が獅子の頭のような形をしていることからついた名称だそうですが、どの岩が獅子の頭のようにも見えるのか、よく分かりません。


遊歩道はこの「熊渕橋」を渡ったところにある休憩所が終点です。

熊渕橋から眺める上流は「水呑み獅子」と呼ばれる場所で、小さな滝が続いています。

熊渕橋の下流方向は「上熊渕(かみくまふち)」と呼ばれるところで、もの凄い透明度の渕を見下ろすことができます。どんなに絵の具を混ぜてもこの色は出せないだろうと思わせるほどの渕の色で、眺めていると吸い込まれてしまいそうになります。


熊渕橋の下流方向は上熊渕と呼ばれるところで、もの凄い透明度の渕を見下ろすことができます。アマゴと思われる体長20cmほどの魚が泳いでいるのが見えます。

熊渕橋を渡った休憩所の前に注意書きの看板が立てられています。奥面河奉行の名で、「ここから先は、一人の者、子供連れの者、手持ち荷物を持つ者、登山靴を着用しない者、その他装備が十分でない者は通行を禁ず」という内容です。また「雨天のときは如何なる場合も通行を禁ず」とも書かれています。この先は「虎ヶ滝」へ向かう道なのですが、岩や倒れた多くの木々で足元が悪く、足を踏み外せば滝のある渓谷へ落ちてしまうという危険な道なのだそうです。一人だし、十分な装備をしていないので、ここで引き返すことにしました。


熊渕橋を渡った休憩所の前に注意書きの看板が立てられています。奥面河奉行の名で、「ここから先は、一人の者、子供連れの者、手持ち荷物を持つ者、登山靴を着用しない者、その他装備が十分でない者は通行を禁ず」という内容です。一人だし、十分な装備をしていないので、ここで引き返すことにしました。

途中、亀腹展望台に向かう道があったので、せっかくなのでそこに立ち寄ることにしました。渓泉亭・面河茶屋の向かいにある亀腹の上にある展望台ということで、距離も短いだろうとたかを括っていたのですが、これが大間違い。さすがに高さ100メートルの安山岩の一枚岩の上に登るというので、大きく迂回することに加えて、かなり急な勾配を登っていきます。遊歩道というよりも登山道ですね、ここは。面河渓を舐めてはいけないってことですね。


亀腹展望台に向かう遊歩道を登ります。

亀腹の上だけに断崖絶壁になっています。注意して進みます。

途中で何度も気持ちが折れそうになりながらも、なんとか亀腹展望台に到達しました。ただ、この亀腹展望台からは残念ながら樹々が生い茂っていて石鎚山の姿は見えませんでした。樹々の間から辛うじて見えたのはこの山、ニノ森です。ニノ森は石鎚山脈の堂ヶ森より石鎚山に至る縦走ルートの途中にある山で、1,930メートル。愛媛県では石鎚山に次ぐ第2の高峰で山名もこれに由来します。四国でも第4位、西日本でも第5位の高峰です。なかなか美しい山容です。秋には山頂から南側にあるこの面河渓まで紅葉前線が下ってくるそうです。


亀腹展望台から見た愛媛県では石鎚山に次ぐ第2の高峰、ニノ森(1,930メートル)です。美しい山容です。

亀腹展望台への遊歩道(登山道?)は五色橋のところに出てきます。さすがに歩き疲れたので、渓泉亭・面河茶屋に立ち寄ってソフトクリームを食べてひと休みしてから、松山に帰ることにしました。


亀腹展望台への遊歩道を五色橋まで下ってきました。

面河渓の入口にある面河バス停に、1715分発の久万営業所行きのバスが石鎚土小屋から下ってきました。これに乗車します。バスには乗客がお1人乗っておられます。朝、石鎚土小屋まで行くバスでもご一緒した男性です。石鎚山か瓶ヶ森を登ってこられたのでしょうね。


面河渓の入口にある面河バス停に、1715分発の久万営業所行きのバスが石鎚土小屋から下ってきました。これに乗車します。

バスは面河川に沿って、緩やかに下っていきます。車窓は新緑が美しく、いつまで眺めていても見飽きません。

定刻の1810分に久万営業所に到着。JR四国バスの久万高原駅まで歩いて移動し、1840分、JR松山駅行きのJR四国バス久万高原線のバスで松山に帰ることにしました。JR四国バスの久万高原バス停は自動車駅になっています。自動車駅は、旧国鉄のバス路線におけるバス停留所のうち、鉄道駅と同等の業務を執り行う施設のことです。かつて運行されていたJR四国バス(旧国鉄)の松山高知急行線の「なんごく号」もここに停車し、休憩時間を取っていました。現在、久万高原駅は久万高原町の所有になっています。


JR四国バスの久万高原駅です。久万高原線のJR松山駅行きのバスの前に、落出行きの久万高原町営バス久万落出線のバスも発車の時刻を待っています。

久万高原駅内に、このようなポスターが貼られていました。「第10回 石鎚山ヒルクライム2022。この石鎚山ヒルクライムは日本最高峰である石鎚山(1,982メートル)を舞台に、全長22.1km(計測区間18.4km・獲得標高1,100メートル・平均勾配6.0%)で登坂の速さを競い合う自転車レースです。まさに、あの石鎚スカイラインを面河渓から石鎚土小屋まで自転車で登って行くタイムレースです。ここ2年間ほど新型コロナウイルスの影響で開催が中止になっていましたが、今年(2022)は9月4()に3年ぶりに開催されるようです。石鎚スカイラインや面河渓で見かけたロードレーサーに跨って、果敢にも急勾配の登り坂に挑戦していた集団は、おそらくこの石鎚山ヒルクライムに向けての練習をしていたのでしょうね。路線バスで登ってみて、石鎚スカイラインの勾配の厳しさを実感してきたばかりなので(と言っても、私は座席に座っていただけですが…)、レースの過酷さが十分にイメージできます。こういう大会もあるので、ある程度のサイクリストの需要が見込まれるため、伊予鉄南予バスも面河線にサイクルバスを走らせているのでしょうね。


久万高原駅内に今年9月に開催予定の「第10回 石鎚山ヒルクライム2022」のポスターが貼られていました。

愛媛県では、今や“サイクリストの聖地”として全国的、いや世界的にも有名になった瀬戸内しまなみ海道を中心に、県全域を誰もが自転車に親しみ、楽しめる「愛媛マルゴト自転車道」計画が進行中で、国や県、各市町が連携して、既に全28コース、総延長約1,216kmサイクリングコースを案内するブルーラインが引かれていたり、ピクトグラムが設置されるなどの整備がなされています。この中には、「石鎚山岳輪行コース(全長146.6km)」として石鎚スカイラインや町道瓶ヶ森線(別名:UFOライン)ももちろん含まれておりますし、「伊予灘・佐田岬せとかぜ海道(全長81.8km)」として鉄分補給シリーズ(その4):伊予鉄バス八幡浜三崎特急線でご紹介した佐田岬メロディーラインも含まれています。

このところ鉄分補給シリーズと題して鉄道や路線バス、フェリー等で愛媛県内を旅しているのですが、これがメチャメチャ面白いんです。私はこのコラムを書き上げることで旅を完結させるようにしているのですが、1つの旅が終わると、さぁ〜次はどこに乗りに行こうかな?…とワクワク感が抑えきれない状態になってしまうんです。この私の中でのワクワク感がいったいどこから湧いてくるのか、これまでは上手く説明ができなかったのですが、今回路線バスで標高1,492メートルの石鎚土小屋まで行ってみて、そのワクワク感の源泉が朧げながらですが、見えてきた感じがしています。

それって、ここ愛媛は移動することが楽しいところなのだということです。「さぁ〜次はどこに乗りに行こうか?」は、「どこに行こうか?」ではなく、あくまでも「どこに“乗りに”行こうか?」なんです。すなわち、移動が楽しいってことなのです。残念ながら愛媛県内には私達をワクワクさせるような魅力的な名所旧跡が幾つもあったり、大規模なテーマパークがあったりというわけではありません。そのような人工物ではなく、むしろ、ワクワクさせるのは大自然が作り上げた美しい造形美のほうなんです。人間の力を遥かに超える圧倒的なパワーを持つ大自然が、何千万年もの気の遠くなるような長い時間をかけて作り上げた造形美には、ただただ圧倒されます。ひと言で言うと、風光明媚。瀬戸内海と宇和海、そして太平洋という雰囲気がまったく異なる3つの海に囲まれ、しかも、その海も比較的広い灘があったり、狭い海峡があったりと様々な顔を見せます。さらには、海だけでなく日本列島最大の断層帯である中央構造線の地殻活動が形成した西日本最高峰の石鎚山をはじめとした高い山々が山脈を形成して、瀬戸内海の海岸線に沿って屏風のように長く伸びています。そのような特殊な地形が県全域に広く展開されているわけです。そして県域の多くが、その大自然が生んだ造形の美しさから、2つの国立公園(瀬戸内海国立公園、足摺宇和海国立公園)1つの国定公園(石鎚国定公園)に指定されています。このほか佐田岬半島宇和海県立自然公園や肱川県立自然公園、四国カルスト県立自然公園など大規模な県立自然公園が7つもあります。四国は国立公園や国定公園、県立の自然公園が多いところではあるのですが、その数と規模(面積)、さらには多彩さという面でいうと、愛媛県が一番です。このような面白い地形のところ、日本全国で見ても、少なくとも北海道以外に私は知りません。

このような複雑な地形ですので、海の景色も山の景色も同じではなく、見る角度や距離、高さ、季節やその日の天気、さらには時間によって様々に変化します。ただでさえ美しい風景に変化が加わることで、さまざまな表情を見せ、さらに美しく見えます。だから移動そのものが楽しいのです。地球科学的な価値を持つ遺産(大地の遺産)を保全し、教育やツーリズムに活用しながら、持続可能な開発を進める地域認定プログラムのことを『ジオパーク(geopark)』と呼ぶのですが、まさに愛媛県全域がジオパークと呼べるものなのではないかと私は思っています。サイクリングよし!、バイクのツーリングよし!、鉄道や路線バス、フェリー等に乗ってのぉ〜んびりと車窓の景色を楽しむ旅もよし! 愛媛県は移動することそのものが楽しいところ、逆の言い方をすると、移動してみないと、その良さや素晴らしさが分かりにくいところなのではないか…と思い始めました。もしかすると、四国霊場八十八ヶ所巡りの遍路道もそうだったのかもしれません。八十八ヶ所の寺を巡ること以上に、その寺を巡る遍路道の途中で触れるこの地形を形成した大自然の圧倒的なパワー、すなわち“気”を全身に浴びることが、そもそもの目的だったのではないか…ということに気づきました。巡礼はお祈りではなくて、あくまでも修行なわけですから。自分の脚で歩いて巡り、その大自然が持つパワーの大きさに気づき、畏敬の念を持つことが“悟り”と呼ぶものなのかもしれません。ちなみに、四国霊場八十八ヶ所の札所のうち、愛媛県内には第40番札所の観自在寺(南宇和郡愛南町御荘)から第65番札所の三角寺(四国中央市金田町)までの26ヶ所の札所があり、これは他の3(徳島県24ヶ所、高知県16ヶ所、香川県22ヶ所)を凌いでいます。

とにかく、この愛媛県というところは、他の都道府県とは根本的に異なる特殊なところのように感じています。だから、面白いし、ワクワクさせてくれるのでしょう。

私が久万高原駅に着いた時、既に折り返しのJR松山駅行きのバスは到着していて、発車の時刻を待っていました。車体に久万高原のラッピングが施されています。四国カルストですね。ここも中央構造線の断層活動が生んだ奇跡的な地形によるもので、四国に、いや日本にこんな風景が広がっているところがあったのか!…と思わせてくれるほどのところです。是非近いうちに行ってみたいと思っています。


JR四国バスの車体に、日本三大カルストの1つ「四国カルスト」の写真がラッピングされています。


そのJR松山駅行きのバスの前に、平成29(2017)より久万高原〜落出間をJR四国バスに代わって運行するようになった久万高原町営バス「久万落出線」のバスも発車を待っています。久万高原町は平成16(2004)に上浮穴郡の久万町、面河村、美川村、柳谷村13村が合併して誕生した自治体で、久万落出線の終点の落出(おちで)は高知県との県境に近い旧柳谷村にあります。落出バス停は、久万高原町役場 柳谷支所(旧柳谷村役場)のすぐ前にあります。ここも旧自動車駅の落出駅になっています。柳谷村は面河川とその支流の上流域のV字渓谷にある山村で、面河川は高知県との県境を越えると仁淀川と名称を変えます。JR四国バスの車体にラッピングされている日本三大カルストの1つ「四国カルスト」柳谷村にあります。ちなみに、この四国カルストはこの久万高原町(旧柳谷村)を中心に西は西予市、北は喜多郡内子町、さらには南は高知県の高岡郡檮原町と津野町にかけて広大に広がるカルスト台地で、とても日本とは思えないような雄大で美しい高原の風景が楽しめるところなのですが、いかんせん遠くて、JR四国バスにラッピング広告がなされてはいても路線バスが通っていないようなところなので、自分でクルマを運転して行くしかそこに辿り着ける方法がありません。ですが、近いうちに絶対に訪れてみようと思っています。

1840分、JR松山駅行きのJR四国バス久万高原線のバスは定刻に発車しました。乗客は、私のほかには伊予鉄南予バスの久万営業所まで乗り合わせた登山客の男性と、高校生ぐらいの若い男性が2人の計4名。この日は遊歩道とは名ばかりの山道を、距離にして約18km、歩数にして25千歩ほどを歩いたので、さすがに疲れました。でも、心地良い疲れです。路線バスに往復で6時間弱も乗れたので、鉄分の補給も十分すぎるほどできたので、バッチリです。さぁ〜て、次はどこに乗りに行こうかな?

 

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